アランさん一家に付き合ってもらって、お土産の買い出しをした。 これで心おきなくラストフライトを迎えられる。 ジュネーブ発の飛行機は18:30テイクオフなのでゆったり一本飛んで帰れるが、 山沈などのトラブルがあったらピンチだ。セーフティフライト厳守である。
というわけで、スタートを見届けるために再びやってまいりましたモンシェリーのテイクオフ。今日も好条件だ。
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テイクオフはブリーフィングのわずか30分後。結構忙しい。 レーサースーツに身を包んだ正ちゃんは、精悍な感じでかなりカッコイイ。
13時02分、時間きっかりに飛び立った。頑張れ、正ちゃん! 自分を信じろ!
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テイクオフしたレーサー達は右サイドのリフトに乗り、真上の雲につける。
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一気に高度を稼いだあと、一直線に裏の岩山の上に出来た雲へと走っていく。とにかく速い。
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さて、選手達が視界から消えた後、我々もラストフライト。いい飛び出来ますように!
テイクオフ直後、なんとここまでノーミスの絵美ちゃんが「高度が稼げず、降りてしまいました〜」と無線。 なんじゃそりゃ〜!? テイクオフまで歩いて登れる距離だったので、リトライすることに。
と思ったら、今度は平田さんが「降りてしまいました〜」なんと仲の良いことよ。 どうやら低空でコラップスしたらしい。ダストデビルのせいかな。 とにかく無事で良かった。夫婦そろってリトライ。
その頃僕は、3日前の雪辱を晴らすべく、雲低までしっかり上げた後、先ほどのレーサー達と同じように裏の岩山を目指していた。 少し後ろを井沢さんが見守るようについてきてくれている。
半谷さんから無線が入る。
「北さんは滑空比が違うんだから、そこんとこ考えて飛ばなきゃだめだよ!」
「了解しました!」
皆から「スピード速いね」「グライダー小さいんじゃないの?」などと言われ続けた今回のツアー。 買った時は問題なかったSサイズのバギーラだが、順調に新婚太り(?)して今では上限を若干オーバーしているせいか浮きが悪くスピードも速い。 気を使ってか、正ちゃん以外は誰も「やせろ」とは言わない。 パラ貯金は今回のツアーで消えたので、当分グライダーは買えません(ごめんなさい校長!)。 これはもう、減量するしかない!?
ぐんぐん岩山のピークが近づいてくる。高度はギリギリだ。 トレッキングをしている人がいる。顔がわかる距離だ。しかし手を振る余裕は無い。 ここが頑張りどころだ。
「サーマルは、あると思ったところにあるんだ」誰かの言葉を思い出した。
「尾根の岩の形が風を収束している。風向きから判断して、あそこへ行けば必ず上がる!」
岩の尾根を越えた。とたんに強烈なリフトに乗った。「やった! これで日本に帰れる!」 そう、ここでタコったら帰りの飛行機に乗れないのだ。 危機感は人を育てるのである。
尾根に沿って東へ流し、3日前に降りてしまった場所を余裕でクリア。 選手達がはるか北の方に見える。 その向こうにうっすらともやのようにレマン湖が見える。 湖のほとりにはミネラルウォーターで有名なエビアンがあり、モルジーンはその源流なので水がおいしいのだ。
井沢さんが奥に突っ込んでいくが、僕は無理はせずそのまま見送ってテイクオフ上に帰ってきた。 リベンジ成功である。
雲の横を抜けて… (正面は井沢機) |
レマン湖を望む (写真ではわかりませんが、 肉眼では見えたんだってば!) |
ちょうど平田夫妻も上げ切って、同じコースを走って行った。 僕も再び追いかける。途中の雲でくるりと回して高度を稼ぎ、今度は楽勝。
半谷さんの誘導で、皆でモルジーン方面へ谷渡りすることになった。 距離にして 5〜6km の、グリーンのきれいな山に取り付くのだ。 トップアウトしてスーパーモルジーンを取ってランディング、というタスクだ。
谷渡り | はい、着きました |
Oasis 絵美、Nomad 井沢両名は楽々クリア。 平田、北山組はなんとかたどり着いたが上げきれず、アヘアヘプーとランディングへ向かった。 Gin チーム強し!
1週間過ごしたモルジーンの谷 |
モルジーンのランディング 青い線がPWCのゴールライン |
最後のフライトは最高のフライトとなった。最高高度は標高で 2,600m。3時間近く飛んでたかな。 すがすがしい気分で大満足してランディングすると、アランさんが熱心にライズアップをしていた。 アランさんも良く飛べて満足だったとのこと。ゆっこさんとリサ、シルバンもいて、 会えずに空港へ向かうのかと思っていたが、会えてよかった。 短い間でしたが、楽しかったです。ありがとうございました。 「もう帰っちゃうの? 今度は1ヶ月休みを取っておいで!」とゆっこさん。 1ヶ月は無理かも知れないけど、きっとまた来ますね!
と、ここで正ちゃんがタコったとの連絡が入る。なんと!!
残念だが、果敢に攻めた結果なら良しとしよう。
降りてきた絵美ちゃんと、またまた届かず谷の反対側に降りた平田さんをピックアップしてレジェの駐車場へ。 パジェロに乗り換えて、ここで井沢さんとはさようなら。よい出会いでした。 また長野に遊びに行くときはよろしく。(写真をたくさん使わせて頂きました。Thanks!)
ギリギリまで飛んでたので、出発まであと2時間しかない! あわただしくレジェの谷を後にして、車はジュネーブへと向かう。 通い慣れた風景が後ろへと飛び去る。
振り返れば、夢のような一週間だった。 一生の想い出になるような、そんなインパクトのあるツアーだった。 何かが自分の中で変わった。
岩屋から出たことのない僕にとって、初めてのヨーロッパ。いきなりのフランス。 雄大な景色の中でのスケールの違うフライト。 半谷さんの献身的なガイドと理論的で的確な指導、そしておいしい手料理。 正ちゃん達の戦場、PWCの熱気。 あったかいアランさん一家。陽気で人なつっこい現地の人々。
パラをやってなかったら、こんなフランスの片田舎で、こんな密度の濃い一週間を過ごすことはなかったと思う。 パラグライダーという翼と能力を与えて下さったTAK校長に感謝します。
そして、素晴らしい戦いを見せてくれた扇沢さん、辻さん、正ちゃん。 こんな美しく厳しい世界で、何年も前から戦っていたのですね。 今回のツアーでそれが実感できてとてもうれしかったです。
そして何よりも、最高のガイドでありインストラクターであり、ドライバーでありシェフであった半谷さんに感謝します。 「アエロタクトチームの皆さんを放っておいていいんですか!?」と心配になるぐらい、僕らがツアーを楽しめるようにと 本当に心を尽くして世話を焼いて下さいました。半谷さんあってのツアーでした。
おかげさまで大満足でした。ありがとうございました!
是非また行きたい。ミューシー、パッシー、サンチレール、シャモニー… まだまだ飛んでいないエリアがたくさんあるので、それは次回以降の楽しみにとっておきたいと思います。 そうそう、本場イタリアのパスタも食べに行かなきゃね!
最後に「フランス行こうかな」と何気なく言ったら「行っておいで! 行くからには、しっかり楽しんで来ないとダメよ!」 と気持ち良く送り出してくれた妻、寛子に感謝します。 子供が産まれて落ち着いたら、今度は一緒に行って飛ぼうね。
おわり。 (次回フランスツアーに続く!?)